天使のような笑顔で

affection

授業が終わると、案の定彼女はクラスのみんなに取り囲まれてしまった。


俺らの席の周りは、やけに人口密度が高くて。

どこから聞き付けたのか、他のクラスの奴の顔もちらほら見られる。


「かわいいよな、桜庭さん」


俺の席の左側に立ち、小学校から一緒の和也がそう言った。


その顔を見ると、何ともデレっとしていて。

生徒会長の威厳も、これじゃあ台無しだ。


「佐藤さんに怒られるぞ」


佐藤さんは、和也の彼女。

違うクラスだからいいものの、こんな姿を見たらただじゃすまないだろう。


「俺はさ、女性として好きとかじゃなくて。何かこう、人間として癒されるっていうかさ……」


目じりを下げてうっとりとする和也を放って、俺も桜庭さんに目を向けた。


大勢の中でも、決して紛れたりしない。

笑っていなくても、そのかわいらしい顔立ちは見劣りしなくて。


「隣に座れるなんて、ラッキーだな真吾は」


和也の妬むような声が聞こえる。


まぁ、確かにラッキーなのかもしれない。

一番近くで、あの笑顔を見られるんだから。
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