天使のような笑顔で
「ドイツなんて、こっから何時間かかるんだよ?幾らあったら、行けるんだよ?」


つい、口に出してぼやいてしまった。

駅までの道をゆっくりと歩きながら、近くにあった小石を軽く蹴飛ばす。


ドイツに行くから。


だから、安以は今日応援に来てくれなくて。

高校の話をした時も、曖昧な返事しか返ってこなかったんだ。


何で…言ってくれなかったんだろうか?

こんな大事な事を、何で俺は先生から聞かされなきゃいけないんだ?


それが、ひどく悔しかった。

安以の口から、きちんと聞きたかったのに。


試合が終わってから、俺は何度か安以の携帯に電話している。

だけど呼び出し音が鳴るばっかりで、肝心の安以は電話に出てくれない。


モヤモヤばかりが、どんどんと募っていく。


安以と話がしたい。

ドイツに行く事を、確認したい。


もしかしたら、島崎先生の勘違いなのかもしれないし。


もう一度、俺は携帯を取り出した。

リダイヤルを押し、微かな期待を胸に携帯を耳に当てる。


トゥルルル……


相変わらずの、呼び出し音。

しばらく聞いた後、諦めて通話を切ろうとした時だった。


『もしもし……』


安以の声が…聞こえてきた。
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