天使のような笑顔で

sorrow

「おはようございます、高崎君」


翌朝。

桜庭さんは、初めて見た時と同じような天使の笑顔を俺に見せてくれた。


だけど、俺は知ってしまったんだ。

この笑顔を独り占めできる人が…別にいる事を。


「あぁ、おはよ」


とりあえず、何事もなかったように接するしかなかった。

だって彼女の好きな人を聞いてしまった以上、今更告るとかはあり得ない。


「アイは、元気ですか?」


席に着くと、彼女は少し心配そうに尋ねてきた。


結局、部活が終わってアイを迎えに行った俺は。

そのまま自転車のカゴに乗せて、家へと連れて帰った。


動物好きの家族なんで、アイは何の抵抗もなく歓迎された。

母さんと姉キは、特に取り合いするほどで。


アイの方も最初は怯えていたものの、次第に慣れていってくれてた。


「とりあえず、元気だよ。猫まんましてやったら、ガツガツ食ってたから」


「なら、良かったです。そうだっ、帰り…見に行ってもいいですか?」


「えっ?家に?」


「やっぱり…迷惑ですよね?」


そう言ってしょんぼりする彼女に、慌てて声を掛けた。


「いやっ、来てもらうのはいいんだけど。今日は病院……」


うっかり口を滑らせてしまい、慌てて俺は口を右手で押さえた。


「病院ですか?どこか悪いんです?」


墓穴を掘ってしまい、俺はかなり自己嫌悪に陥っていた。

どうやってごまかそうかと、必死に考える。
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