only me

そこから一人の人間が現れた。
黒髪の青年で、白衣を着ていた。

「シャルバー!?」
シュウは思わず声を弾ませる。
シャルバーとは、彼の友達だったが
消えて亡くなってしまったのだ。

「残念ながら、シャルバーではない」
青年はシュウを見ながら言う。
シュウはそれを聞くと、残念がった
顔で「そうか」と呟いた。

ユウは状況が読み込めない顔で青年を
見ている。そして、青年に聞いた。
「ここは何なんだ?」
青年はユウをしばらく見つめると、
話し始めた。

「ここはー中立の世界。裏と表の世界の
真ん中に位置する世界だ。つまり、死後の
世界だよ」

「まさか…本当に存在したのか…」
いや、それよりー死後の世界…。

「俺達は…死んだのか?」
ユウが真剣な趣きで青年に問う。
青年は首を振ると、問いに答えた。

「それは違う。私は死んだ者だから、
そっちの世界には行けないのだ。だから
お前達をここに呼ぶしか話す方法が無かった」
「話って何だよ?」

青年は2人を交互に見た。

「その前に、話しておかなければ
ならないことがある」
ユウとシュウは真剣に聞いた。


「まだ世界が1つだった頃…。民族に
違いはあっても、共存し仲良く暮らして
いた。だがある日、私と共に研究して
いた男が”複製”という存在を確認した。
光の世界にいる民は闇の民にも存在する。
ただ闇の民達にも意識はあり、同じ存在
でも中身は全く異なる。ただ闇の民は
毎晩本体の夢を見て、自分の中に何かが
いるという不快感に襲われる。そして
アポの実さえ摂取していれば生きられ、
人間の機能を持たず、心が無い体…。
本体が死ねば死ぬ。本体が飲み込もうと
すれば飲み込まれる。生まれる意味も無い
不幸な運命…その研究結果が洩れてしまい、
世界は大混乱に陥ったのだ…」

更に青年は続ける。

「闇の民は光の民を憎み、襲ってくる
ようになった。しかしそれは裏目を見れば
自分達も死んでしまうということだ。その
状況を打破するために、大陸を切り離して
世界は割れ2つに別れた。それから長い年月
が経ち…今に至る」

「じゃあ何で…空は俺達を連れてきたんだ?」
ユウは信じられないとでも言うような目をして言う。
動揺を隠せないのか、少し震えていた。
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