飼い犬に手を噛まれまして


 深陽さんは「年上の彼女」って聞いていたけど、社会人なのかな? それでも私より全然若いし、それに上品で美人だ。ワンコと深陽さんが二人でいるとこを想像する。とてもお似合いだと思う。


「実は……今日は星梛と、ちゃんと別れようと思って来ました」


「えっ!?」


 ええっー! ちょっと、待ってよ!


「星梛がこのマンションを借りたには訳があります。彼のご両親に私たちの交際を反対されたからなんです」


「は……反対? 田舎からだと通学が大変で大学から近いからって聞きましたけど……」


 深陽さんは、微笑んだ。


「嘘ですよ。彼の実家はここより郊外ですが、電車なら数分の都内です。田舎ではないと思います」



 わ、ワンコめッ! 嘘ついてた?

 私は叫び出したい気持ちをぐっとこらえるようにコーヒーをごくりと飲み込んだ。




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