飼い犬に手を噛まれまして


 首にぶら下がっていたリボンが床に落ちると、少し冷たい手が胸元に侵入してくる。


「や、だめです! 先輩、仕事中ですよ!」


 先輩の吐息が耳にあたる。


「じゃあ、その資料、コピー三百部追加して。茅野は仕事してればいいよ。俺、休憩中だし」


「先輩ーっ!」



 コピー機と先輩に挟まれて、頭の中が真っ白になる。


「大きい声出すなよ……」


 咎めるような声。暴走した先輩の手は、スカートのスリットからストッキングを履いた足を撫でた。


「あっ……!」


 背筋から全身に電流が走った。先輩は指先で私の肌を堪能してから、じっくりと優しい愛撫をしてくるんだ……脳内が何度もクラッシュするような快楽を与えて、たっぷりと余裕の笑みを浮かべる……それが先輩の抱き方だ。


 それを、まさか此処で?




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