飼い犬に手を噛まれまして


「なーんてな。悪い、リボンが落ちた」


 先輩は長身をかがめて床に落ちたリボンを拾いあげると、意地悪く笑った。


「び……びっくりしました……先輩のバカ!」


 制服の襟をたてられて、先輩がリボンを結んでくれる。


「あれ? 曲がってるな。難しいな、コレ」


 悪びれた様子のない先輩を睨み付けると、曲がったリボンをなおした。



「怒るなよ。そんな顔されると、今から早退してムチャクチャにしたくなるだろ」


「もうムチャクチャになってます!」


 くるりとコピー機の方に向き直り、先輩に背を向けた。

 本当にそういうことされるんじゃないかって、びっくりしたんだから!



「ごめん、茅野」



 だけど、その甘い声だけで私は先輩の全てに溶かされてしまう。


「……いいです」



「続きは、またやってやるから」


「そういうことじゃないですっ!」




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