飼い犬に手を噛まれまして


 いつ実家に帰るのか、大学にはちゃんと通っているのか……ワンコには訊かなくちゃいけないことが沢山あるのに、私は何も訊けずに黙々と口に弁当を放り込むことにした。


 最後のご飯を綺麗に平らげたワンコは、ごちそうさまでした、とぺこりと頭を下げた。




「何も訊かないんですか? 紅巴さん」


「あ、訊いて欲しかった?」


 ワンコはふんわりと笑うと、首を振った。


「お風呂沸かしておきましたよ」


「うん、ありがとう。ワンコは入ったの?」


「はい、……あ、ひょっとして一緒に入って欲しかったですか?」


「そんなわけないじゃん!」


 それを約束してるのは、先輩と、だ。ワンコは、残念と呟いてテーブルに頬杖をついた。



「紅巴さん」

「なに?」


「この前は、すみませんでした。また部屋に入れてくれてありがとうございます」


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