飼い犬に手を噛まれまして
飲み会の話題の中心は、常に和香だった。デザイン課では「姫」なんてあだ名で呼ばれているらしく、須田さんも山咲さんも酔いが回ってきたら、しきりに和香を姫って呼んでた。
「姫が、やりたいプランに予算が足らないからどうにかしてこい! って課長に啖呵切った時は、俺ら相当焦ったぜ」
「どうにかしてこい! なんて言ってませんよー。どうにかしてくれませんか? て、低姿勢でしたよ」
「そうだったかな?」
笑いが起こった。私は、和香は凄いんだなぁって、ただただ感心していた。
与えられた仕事だけをする私と違って、和香は自分でやりたいことを決めているんだ。
「なんか、和香かっこいい!」
「あはは、姫かっこいいってさ! これからも武勇伝期待してますよ」
「紅巴まで、やめてよねー」