飼い犬に手を噛まれまして

 酔いがまわって、料理もほぼ食べ終えて、そろそろ帰ろうかなーなんて考えている時、「悪い、遅くなった」と、突然その人が姿をみせた。


「郡司先輩?」

「やった! 来てくれたんですね。よかったら隣どうぞ」


 和香が自分の隣のソファー席を提供した。須田さんも山咲さんも椅子の席だから、そこしか座れるところがない。

 だけど、そこに座ると私と郡司先輩の真ん中には和香がいて……和香越しにしか郡司先輩が見られない。


 私も先輩の隣に座りたい!


 でも、今日は和香が主役みたいだし。私は人数合わせのオマケ人員。仕方ないよね。お尻をズラしてテーブルの隅に追いやられた。



「茅野、悪いな。狭くないか?」


「大丈夫ですよ」



 ああ……それに気づいていただけただけで幸せです。






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