飼い犬に手を噛まれまして



「紅巴さん、泣いちゃうんだもんなー。ほんと、泣き虫ですよねー」


「ワンコだって、深陽さんにフられて泣いたじゃん」


「俺は、長年の恋に終止符うったんすよ! 泣いて当然でしょー、そっちのたかがお友だち話と一緒にしないでくださいよ」


「ひどーっい、私には大問題なの! だって、恋愛自体久々なんだもん……」


 レモンスライスを何枚も浮かべた濃いサワーをごくごく飲んだ。

「わかりました! 男女間に友情が存在するか? ってとこが心配なんですね。お話しを聞くと、紅巴さんの彼氏さんは大変おモテになるようですし」

 ワンコも負けじと、グラスを空にした。

「過去のことなんだよぅ? 多分、過去なの……今は…………」

「わかりました。俺が一肌脱ぎましょ」

「はいっ?」


< 196 / 488 >

この作品をシェア

pagetop