飼い犬に手を噛まれまして



 ワンコは宣言通りに、着ていた白いシャツを、てやーっと脱ぎ捨てた。


「ちょっと! 露出狂! 何するつもり?」

「今から、ちょっとだけワンコ辞めて、紅巴さんのお友だちになります。俺たちに何も起こらなかったら、彼氏さんも大丈夫ってことでいーのではないでしょうか?」


「ないでしょうかーって、何が大丈夫なの? ギャーーーー!」


 若さ溢れる、スベスベのワンコの肌。お酒のせいで、少し汗ばんでいる。私はその上半身に抱き締められて、悪のりしたワンコに押し倒された。楽しそうなワンコは、ケタケタと笑って私を離さない。


「やめてーっ!」

「嫌です」

 な……なんでそこだけ真面目な声?


 恐る恐る顔をあげると、ワンコの端正な顔がすぐ目の前に迫る。背筋がゾクリとした。

 男友だちとふざけて抱き合ったら、本当にこれに近い感情なの?


「紅巴さん……」

「やめてよ……何?」


 そんな大切な人を呼ぶような声ださないで。



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