飼い犬に手を噛まれまして


 ワンコ持っていかなかったんだ……。

 当然だよね。私からプレゼントされたボールなんて、いらないよね。



「持っていくか?」


「いえ、捨てていきます」


「そうか? 勿体ないな」



 先輩の車に乗ってマンションをあとにする。寂しさと新しい生活の期待と複雑な思いでいた。

 ううん、寂しい思いなんて今だけだ。きっと、先輩との毎日は楽しくなる。


 先輩の片手が私の手を包む。


「焦らして悪かったな。茅野とは、はやく一緒に暮らしたいと思ってさ」


「嬉しいです」


 赤信号でのキス。後部座席の荷物に囲まれて、先輩はちょっと大胆なキスをした。







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