飼い犬に手を噛まれまして


 先輩は、とびきりの笑顔で、だろ? とチャーミングに笑った。


 ああ、よかった。


「親父のやつ見返してやる!

 と、言っても、今は両親も復縁してるし、フランスからずっと生活費を送ってもらってたんだ。苦労したと思う。

 いつか親孝行してやりたいよ。アルルは、田舎町だけど、ヴァン・ゴッホが描いたカフェとかがある良い所だ。

 近いうちに一緒に行こうな?」


「はい!」


 会ってみたくなった。先輩のご両親に……テレビでしか見たことがないようなプロヴァンスな石畳の道にお洒落な家に住んでいるだろうな……



「ほら、ボーっとしてんな。着いたぞ。時間やばっ」


「あ! 本当だ! 先輩待ってください!」



 車から慌てて降りてオフィスまでのダッシュ。なんでもないことなのに、楽しくて仕方ないんだ。




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