飼い犬に手を噛まれまして

 大人が十人以上座れそうなフカフカのソファーに座る。お姫様なんていう年じゃないけど、一時だけのお姫様になった気分。

「真相は闇の中か……」

 萌子先輩の言葉をリピートしながら、メロンを頬張った。


『紅巴さん、俺すごい満たされてます』

 ワンコからの国際電話、開口一番にその台詞。


『あの雨の日から色んなことに巻き込んですみませんでした。本当に申し訳なかったです。ああ、それと紅巴さん、やっぱり深陽にはフィアンセいなかったんですよ。どうやら、親父の差し金らしく、そこまで姑息な真似して俺たちを引き裂こうとした親父には人として幻滅ですよ。ただSKMの企画デザイン課には惹かれますけど、俺は俺で自分の道切り開いてみます』

『でも深陽さんに飼われてながらでしょ?』

『ま、今はそうだけど……でも俺、こっちでレストランのウェイターのバイト見つけたし、デザインの専門学校にも通い始めたんです』

『そっか……楽しそう。ねえ、日本に帰ってきたら、また連絡して』

『はい、郡司さんにもよろしくお伝えください』

『替わろうか?』

『やめときます。怒鳴られそうで怖いんですよ。じゃあまたね紅巴さん』


 あれから連絡はないけど、今頃何してるのかなぁ?



 
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