飼い犬に手を噛まれまして


「見送りはいいよ。みはる、仕事でしょ? 俺も本当はさ、みはるみたいに仕事したかったんだ……こっちで夜間の専門学校も見つけたし、デザインの勉強もしてみたいんだけどね」


 星梛がバックを肩にかけた。


「みはる、遅刻しちゃうよ。運転手さん、下で待ってるんじゃない?」



 優しく微笑む星梛が、悪魔に見えた。


 なんて可愛くて憎たらしい悪魔なんだろう。



「いってらっしゃい」


 全てを見透かしたような屈辱的な甘いキス。


「元気でね、みはる」



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