飼い犬に手を噛まれまして
毎晩求め合って、貪るように抱き合っても、結局星梛は自分だけ答えみつけて、私の元を去る。
───みはる、一緒に住もう。いいマンション見つけたんだ、角部屋だよ? 二人だけで暮らそうよ……
これ、プロポーズみたいでしょう? と笑った星梛を先に邪険にしたのは私の方だ。
だけど、星梛が押しかけてきて無理矢理はじまった二人だけの生活は、すごい幸せに溢れていて、楽しかった。
「楽しかった……」
「いかがなさいましたか、支社長?」
運転手がハンドルを握りながら首を傾げた。
なんでもない……と答えて、窓の外を眺める。近代的なのに、枝を広げた大きな街路樹が癒やしをくれる街並みを眺めた。