飼い犬に手を噛まれまして

「しゅ、周渡!」


 先輩が寝起きの潤んだ瞳で、ん? と小さくてセクシーな声を出す。  



「あれ……あの二人は?」


「もう帰っちゃったよ。この後も約束あるみたい」


「そっか……」



 掠れた声で、唇をそっと拭う。怠そうに額に手を置いた。

 その一つ一つの動きがいつもの先輩らしくなくて、逆に目を奪われてしまう。



「あはは、本当にお酒弱いねー」


「まあね」


「でも、酔っても最後はワンコのこと黙らせてたよ」


「俺が?」


「うん、社長のことで……」


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