飼い犬に手を噛まれまして
パタパタと廊下を走って鍵をあけた。
ドアが勢い良く開いて、ビジネスバッグ片手に持った先輩が大きく腕を広げると私は一瞬で抱きしめられる。
「ただいま、紅巴。やっと月末の激務から解放されたー」
先輩は、疲れた、と更にキツく抱きしめてきて私の額にキスすると靴を脱いで部屋に入る。
「何してたんだ?」
開いたままのパソコンを先輩が覗き込む。
「また副社長からかよ」と舌打ちする。
小包の存在には気がついてない。
だけど、すぐにダイニングテーブルの真ん中に置かれた小包に気がついて、それを手にする。
「エリナからだ……」
先輩は、小包と私を見比べた。