飼い犬に手を噛まれまして

 先輩は、箱の送り状にざっと目を通すと、それを置いて意地悪にフッと笑った。


「中身気になる?」


 気になる。気になる。気になる。


 だけど、それを言ったら先輩を疑ってると言ってるようなものだ。

 夫婦になってお互いに隠し事はしないようにしてきたけど、先輩はそれをダイニングテーブルに戻す。開けようとはしない。


 ということは、中身を知ってるのかなぁ?


「エリナさんと連絡とってるの?」


 疑問が疑惑にかわって、声が震えた。


「紅巴は、副社長と連絡とってるだろ」


 まるで悪びれた様子のない先輩は、パソコンを指さすと、ほら、と首を傾げた。


「わ、私はワンコとメールしてるけど、それ全部見せてるもん」


 私は何も悪くないのに、声が震えた。


「たしかに」


 先輩は、頷くとクックッと笑い出す。


「冗談だよ、紅巴ムキになるなよ。ハハハ、俺はエリナとは連絡とってないし、そこにKuchen(クーヘン)て書いてあるだろ? お菓子だよ」


「え?」



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