飼い犬に手を噛まれまして


 スーパーの袋をぶら下げて、マンションに帰る。


「紅巴?」

「あれ? 朋菜! どうしたの?」


 部屋の前には、朋菜が座り込んでいた。すごく嫌な予感。


「その子、例の子?」

「うん……多分……」


 たちまち朋菜の目に涙がたまる。



「紅巴! 聞いてよー! タカシさんのお義母さんがねー!」

 
 ああ、やっぱり?


「わかった、わかった。留守にしてごめんね。部屋の中で聞くから! 坂元くん、この子友達の朋菜」


 朋菜は、ひっくひっくと泣きながら頭を下げた。


「お友達ですか? お話があるようならゲーセンで時間潰してきますよ」


 すると、朋菜がワンコの腕を掴んだ。


「ダメ、ワンコの話も聞きたいから。ここにいて」


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