飼い犬に手を噛まれまして

「ワンコ?」


「紅巴、はやく鍵あけて」


「は、はい!」


 朋菜に言われるがままに鍵をあけて部屋に入る。ワンコは居心地悪そうに買ってきた食材を怖ず怖ずと冷蔵庫に入れていく。


「お茶いれるね? アイスティーでいい?」


 朋菜は涙ぐむ目頭をピンク色のタオルで押さえながら、うんうん、と頷いた。


「茅野さんのお友達どうしたんですか?」

 ワンコが声を潜めてきいてきた。


「わかんないけど、同居中の旦那さんのお義母さんのことで悩んでるみたい……」


「へぇ、人妻なんですか? うわぁ、あんな可愛い人が……」


「ちょっと、坂元くん。人妻とかいって朋菜を変な目で見るのヤメて」


「変なとか失礼ですよね! ただ物珍しいから見ただけじゃないっすか!」



「二人とも、何話てるの?」


「あ、朋菜。今、アイスティーできるからね」と声をかけてから、ワンコに「お利口にしててよね」と注意した。

 
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