飼い犬に手を噛まれまして


「あはは、どうしよう。寝袋貸してくれる?」

「いいですよ。でも、この部屋は茅野さんの部屋なのにちょっと可哀相すぎますよね」


 ワンコは缶ビールをテーブルに置くと、ずいっと私の目の前にやってきた。


「一緒に寝ます?」

「い、い……一緒にぃ?」


 その真剣な瞳に、心臓がドキンドキンと早鐘をうつ。


「なに言ってるの? あ、酔ってるんでしょー、からかわないでよね。私にはリップサービスなんかしなくていいから」


「からかってなんかいませんよ。俺は本気です。紅巴さん抱き締めて寝たら、柔らかそう」



 ワンコの左手が、私の右手に重なる。アルコールのせいで、二人とも熱い手……




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