飼い犬に手を噛まれまして
部屋に誰もいなくなると、二日酔いの怠さも手伝って、もう一度布団に横になる。
自分のベッドじゃなくて、ここがよかった。
「ワンコの匂いがする……」
それに、まだ温もりも残ってる。
目を閉じると、引き込まれるように眠りに落ちた。
─────携帯電話が鳴ってる。
手を伸ばしても届かない。なんとなくでるのをやめちゃおうかな……と思ったけど、着信音がけたたましく私を呼び出しているみたいな気がして体を起こす。
「もしもーし……」
はあ、眠い怠い……部屋も汚いままだし……
『茅野? 寝起きか?』
えっ? 携帯の画面を確認した。
“着信 郡司先輩”と確かに表示されている。
「ぐ、ぐ……郡司先輩? え、どうして? 今、シカゴじゃないんですか?」
『ハハハ、驚きすぎだ。今の時代、世界中どこにいたって携帯は使えるんだよ。知らないのか?』
「す、すみません。知りませんでした……」
前に、プレゼンの打ち合わせで郡司先輩と携帯電話の番号を交換したことがあった。
その私の番号をまだ登録しててくれたなんて……しかも、シカゴから国際電話かけてくれるなんて……
『そっちは、昼くらいだろ? だから、電話したんだ』
「シカゴは、何時ですか?」
『三時のオヤツの時間。日付は昨日』
「昨日? なんか変なかんじですね! それにしても、郡司先輩が三時のオヤツなんて……あはは」