華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
男のうちの一人が電話をしに行くと、母親が二人のほうに近寄った。
結都の目は怯えており、少女の目は何も映さないままだ。
「……あんたたちのこと、大嫌いよ。」
そう言った顔はにっこりと笑っており、恐怖をあおった。
――――
「5億だ。すぐに連れて行く。」
電話をしに行っていた男が戻り、そう口にする。
母親の顔には歓喜が見えた。
「わかったわ。」
「上野、5億だ。」
先ほどまでは姿を見せていなかった上野がふらりと現れる。
「はい。」と返事をした後、シルバーのアタッシュケースを持ってきた。
「……!」
「……。」
両親共々開かれたアタッシュケースの中身に釘付けになっている。
中には、耳をそろえて5億、入っていたのだ。