女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 へ?と思った。・・・・・話。うーん、私は、ないんですけど。

 小柄な彼女を見下ろすと、可愛い顔を歪ませていた。

 ・・・・ちょっと、ここで泣かないでよ。

 周りに視線を送ると、小林さんに気付いた周囲の店の販売員が好奇心丸出しの顔でこっちを見ていた。

 どのパートのおばさんの顔にも修羅場を期待したような笑顔が浮かんでいる。

 くそ。もうなかったことには出来そうにないじゃないの。

 私はこっそりとため息をつくと、低い声で答えた。

「・・・・構いませんよ。あと15分ほどで出れますけど」

 パッと顔を上げて、彼女は言った。

「ありがとうございます。じゃあ、私もその頃に取るんで、申し訳ないですけど、外のカフェに行きませんか?」

 了解しました、と言うと、さっと会釈をして逃げるように売り場を離れていった。

 ・・・何なのよ、一体。

「ねえねえ、部長の娘さんでしょ?何て何て?」

 早速右となりの店のパートさん、田中さんが話しかけてくる。瞳がきらきらと輝いていた。

 私は苦笑をして答えた。

「・・・話がしたいとか。何でしょうね」

「そりゃああんた!守口店長の事に決まってるじゃない!元彼だったってのは、みんな知ってるんだから~」


< 105 / 274 >

この作品をシェア

pagetop