女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 サービス業故、人が休みの時は稼ぎ時。

 連日全員体制の連勤で、大忙しだった。

 お盆に突入して、毎日の売り上げが普段の3倍にも5倍にもなる日、休み時間を短縮して売り場に戻ろうと階段を急いでいると、下から上がってきた小林さんにばったりと会った。

「・・・あ、小川さん」

「あら、お久しぶり。そちらもお疲れ様」

 彼女は踊り場で立ち止まり、お久しぶりです、と頭を下げた。

 全く、何て礼儀正しい子なんだろう・・・。

 急いでいるのでと通り過ぎようとすると、あの、と声が聞こえた。

「はい?」

後ろを振り返る。

 小林さんは両手を体の前で固く合せて、思い切ったような顔で言った。

「―――――私、プロポーズ、されたんです」

 ―――――――あん?

 私は体ごと、彼女の方をむいた。

「・・・何て言ったの、今。・・・プロポーズ?守口さんに?」

「はい」


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