女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 さっきの男の人はまだ壁にもたれて立ち、騒がしい室内を見渡していた。

「あの」

 声をかけると、くるりと体を反転させてこちらを見た。一重の瞳がピタっと私の顔の上で止まる。

「もう食べませんので、よかったらどうぞ」

 いぶかしげに見下ろしていた目が私が抱えた食料にうつり、嬉しそうに輝いた。あ、喜んでるわ。あはは、判りやすい。

 彼は指で私が抱えるものを指して、低い声で聞いた。

「えーっと、いいの?」

「はい」

「・・・じゃあ貰います。ありがとう」

 丸々残っていた串カツと豚マンと手巻き寿司を渡す。彼の言ったお礼に笑顔を返すと、自分のテーブルに戻るために人ごみを掻き分けて歩き出した。


 もうすぐでテーブルって時に、ばったりと斎と出くわした。

 お互いにビックリして止まってしまう。

「・・・あ・・・」

 斎の唇が何かいいたそうに動きかけた時、斎の隣に立っていた女性がヤツの袖を引っ張った。

「・・・守口さん?」


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