女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 ドカッと大きな鈍い音を立てて、ダンボールは広げた私の両足の間に落ちてひしゃげる。

 敗れた隙間から、中に入っていたらしい配送伝票の束がいくつも流れ出す。

「・・・・・はっ・・・・」

 冷や汗がこめかみを伝うのが判った。

 驚いて尻餅をつき、とっさに足をひろげたのが良かったらしい。

 伝票の束は重たい。このダンボールが私の頭の上に落ちていたら、まず間違いなくあの世行きだった。

 荒くなる呼吸を胸を押さえてなだめる。

 落ち着け、落ち着け!とりあえず、もう棚は揺れてない――――――――――

「・・・ってか・・・おかしいでしょうがよ」

 呟いた声はすこしばかり震えていた。

 ・・・・何で・・・地震でもないのに棚が・・揺れ・・・。

 目を見開いて固まっていたら、憎たらしい声が聞こえた。


「大丈夫か?」


 私は唇をかみ締める。それから顔を上げて、声の主のほうをゆっくりと睨みつけた。

「・・・怪我はないようだな」

 棚の入口のところで、斎が白衣に両手を突っ込んで立っていた。


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