pianissimo.
ライガは大袈裟なぐらい深い溜息をついて、

「帰りたくねぇなー」

と呟いた。


ほんの少し身を離せば、私を囲っているライガの両腕は緩んで解けた。見上げてじぃっとライガを見詰めたら、「だから、そんな顔すんなよ」と。また困ったように苦笑する。



「帰るの?」

ライガの胡坐の上から、そろそろと脱出しながら聞けば、

「ん。俺、一回家帰ったけど、晩飯食わずに出て来ちゃったから。あの人、今頃多分、電話かけまくってる」

そう答えながら、はにかんだような笑みを見せ、ライガはスッと立ち上がった。


「『あの人』? お兄さん?」

「違う。母さん」


『母さん』と……。愛しげに呼び、くしゃっと笑ったライガが、とんでもなく素敵に見えて、私の胸がキュンと弾む。


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