pianissimo.
雨がしとしと降っていた。朝は気持ちがいいほどの快晴だったのに……。

天気予報では夕方から雨とのことだったので、それを信じて傘を持って来た私、正解。




昇降口を出たところで、ライガを見掛けた。たったそれだけで、ドクンと心臓が跳ねる。ライガの方は、こちらを見向きもしないのに。

もしかしたら、私という存在すら、その記憶からもう消えているかも知れない。



傘を持っていなくて立ち往生しているっぽい。軒下から恨めしそうに雨空を見上げていた。随分距離を置いたライガの背後で、女子たちが数人、肘で小突きあってはしゃいでいる。

多分、『(傘に)入れてあげなよー』『えー、でもー』とか何とか……。



モテモテですね、ライガくん。彼女いるのにね。


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