pianissimo.
「そう。そんなこと言うためにわざわざ戻って来た」

私の言葉をそのまま繰り返して肯定し、ニッと一瞬だけ微笑むと、ライガはフワッと軽やかに立ち上がる。私も何となくつられて立ち上がった。


向かい合わせに立っているライガは、私をじっと見詰めながら微かに瞳を揺らした。たったそれだけのことで、胸がきゅうっと締め付けられて苦しくなる。



「先輩やめて? そんな顔すんなよ」

ライガが眉根を微かに寄せて、苦しそうに呟いた。



「そんな顔されたら――

切なくなる」


ライガは本当に切なげに、また瞳を揺らしながら掠れた声で囁く。


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