pianissimo.
えっ……。
「――って言いたいとこだけど、何でもある。先輩、紹介します、あの子が僕の彼女です」
ライガはそう言って、クシャッと笑った。
「今ここに居ないのに紹介されてもね」
平静を装って返してみたものの、心臓はバクバクうるさいし、顔は有り得ないくらい熱い。
なんだ、冗談か。つい騙されて、うっかり喜んじゃったよ、くっそおー……。
「先輩、今一瞬、喜んだ」
「えっ? はあ? 全然っ!」
どうして疑問形じゃなく断定形? 信じられない、そして腹が立つ。
確かにおっしゃる通りだけども、ライガにだけは言われたくない、触れられたくない。この場合、気付かない振りをするのが正解だ。
「そんなこと言いうためにわざわざ戻って来たの?」
自然とむくれて不満げに返した。