誠の桜に止まる蝶
「本当に歳と沖田は仲がいいなあ。」

酒を飲みながらしみじみと呟く。

「これのどこが仲がいいんですか・・・それより近藤さん。蝶について話が。」

「ん?蝶君についてか?」

「はい。」

そして蝶が巡察中に皆に告げた言葉を近藤にも告げた。

「ためらいなく切る、か。本当に蝶ちゃんは武士だな。」

そう告げる近藤さんの横顔もまた、月夜に照らされた武士の顔だった。

「そうですね。ただ、あいつは本当の武士じゃない。無理だけはさせないようにしないといけねえ。」

「おや。歳。お前が心配するなんて珍しいじゃないか!」

「やっ、違!」

顔を真っ赤にしながら否定する土方。

「そ、そういえば近藤さん。蝶の歓迎会どうするだ?」

「おおっ!そうだ!言い忘れていたが明日歓迎会がてら花見をする。」

「ってどんだけ急なんでだよ!!」

「はははっ!それでだ歳。明日朝一に蝶君のために呉服屋から着物を数着かってきなさい。」

「は?」

「袴も似合うがあの子にも着物をきせてやりたいからな。」

そう優しく笑う顔は穏やかだった。

「ったく・・・本当に近藤さんは急だから困る。」

そういい少し襖を開ける。

見事満月に照らされた桜が美しく風にまう。

まるで蝶の笑顔のようだと土方は心の片隅で考える。
< 91 / 260 >

この作品をシェア

pagetop