待ち受けカノジョ。
「ハハハ!」と高笑いしながら部屋を出て行く森田。

遠ざかる足音を聞きながら、オレは握りこぶしを震わせていた。


「クソッ…!!」

くいしばった奥歯がギリギリときしむ。


森田もぶっ飛ばしたいくらい憎いけど、

何よりも悔しいのは、一部始終奈緒に見せてしまった事だ。


オレがもうちょっと早く着いてれば、こんな酷い目には遭わなかったのに!


眠り続ける奈緒の体に近寄り、顔をそむけながら、胸元にかかる布団をきちんと直した。


「滝山くん…」

携帯の中から奈緒が呼ぶ。


どんなに傷ついているだろう。

オレは一体、どんな顔で奈緒に返事をすればいいんだ?


「滝山くん、大丈夫だよ…私なら」

その言葉に驚いて携帯を見る。


そこには、真っ赤な顔で涙をいっぱい浮かべながら唇を噛みしめている、奈緒の姿があった。


「私は泣かない、絶対」

「奈緒…」


今のオレなら、分かる。


悲しいわけじゃない。

強がってもいない。


ただ、壊れないように…頑張ってるんだ。
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