待ち受けカノジョ。
窓から風が吹き込んできて、カーテンがヒラヒラと揺れる。


「滝山くん、お願いがあるの」

目を真っ赤にした奈緒が、オレをじっと見つめる。

「キスしてくれないかな?」

「えっ?」

こんな時に、冗談?


奈緒は真顔だった。


「ずっと考えてたんだけど…『キスしたら元通りになりました、おしまい』ってお話、よくあるじゃない」

「ああ…『眠り姫』とかね」

「私もそれで、戻るんじゃないかって」


なるほど。


「でも、できないよ…オレ」

さっき森田がやった事と変わりないような気がする。

「私が頼んでるんだからいいの!ダメ元で試してみよう?」

真剣な表情で訴える奈緒。


「奈緒がいいなら…」



目を閉じたままの奈緒の体。

真っ白な肌。

長いまつげ。

本当の眠り姫みたいだ。


鼻につけられた人工呼吸器の下の唇に、自分の口をそーっと近づけた。

どうか、元に戻りますように…


急に強い風がザアッと吹き、白いカーテンがぶわっと舞い上がる。


軽く触れ合った唇を離したその時、

かすかな声を聞いた。


「…滝山くん」

「な、奈緒っ!!」




『待ち受けカノジョ。』 おしまい 


*・゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。. .。.:*・゚・*

            




じゃない!

全然終わってないっ!!

戻ってないから!!


「やっぱ、ダメだったね」

「うん、そうだね」

「でも、オレは得しちゃったけどね」

「こ、こらっ!」
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