待ち受けカノジョ。


電車が行ってしまったばかりの駅のホーム。

並んでベンチに座る。


「ねえ!見て見て!」

桃香がスクバにゴソゴソと手をつっこんで取り出したのは、一冊のノート。

「桃香ね、パソコン部でこんなの作ってんだ!」

表紙には“桃香のafterおしゃれノート”と、ゆる文字で書かれてある。

中をパラパラと見ると、今女の子の間で流行っている服やヘルシーメニューなどの切り抜きが、ペタペタと貼ってあった。


「へぇ、カワイイねー」

とは言っても、おしゃれには興味ないから正直分かんない。

「痩せたらこんな服着るの。で、好きな人に告るんだ~」

「えっ!桃香、好きな人いるの!?」

あひる口でうなずく桃香。

「2年間ずっと片想いだよ。前にメアド交換したっきり、リアクションないけどね。だからかわいくなって、ウチの存在を認めさせてやるんだっ!」

桃香の目がメラメラと燃えている。

「2年も片想い?そんな話聞いてなかったよ?」

「だって…幸せそうな奈緒見てイラッとしてたし」

えっ?

「今のどういう…」

私の声は、ホームに入ってきた電車の爆音でかき消された。

「あ、この各停乗るわ。じゃね!」

桃香が立ち上がる。

「えっ、あ、うん…」

閉まったドアの向こうで、桃香がいつも通りの笑顔で手を振る。


私はさっきの『イラつく』の一言が頭から離れないまま、半笑いで見送った。
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