待ち受けカノジョ。
病室のドアを開けると、奈緒のおばさんが座っていた。

「ああ、滝山君!」

「こんにちは~」

軽く頭を下げた。

「ちょっと早いけど、お昼ご飯食べない?おにぎり作ってきたの」

「やった!オレ朝から何も食べてないんです。いただきまーす!!」


おばさんとオレは、夏休み中何度も会ってるのでお互い慣れてきた感じ。

たわいもない会話を交わしているうちに、おばさんもよく笑うようになってきた。


「あっ、そうそう。困ったことが起きたのよ」

「どうしたんですか?」

「奈緒の学校の図書委員長さんからね、自宅に電話が来たのよ。どうやら、奈緒が当番の時に届いたはずの本が、見当たらないんだって」


あれ?そういえばオレも図書委員だった気がする。

夏休み中もみなさん委員会活動してたのね…。


「2年生の子だから、奈緒がその日に事故にあって入院してるの知らなかったみたいでね。『じゃあいいです』って言ってたんだけど。もし奈緒のせいだったらと思うと、なんだか申し訳なくて」

おばさん、大丈夫だよ。後で奈緒に訊くから。

…とも言えないオレは、おにぎりをモシャモシャ食べ続ける。


「昨日桃香ちゃんが来たから訊いてみたんだけどね、知らないって言うし」

「桃香ちゃん、来てるんですね」

「ええ、少しの間だけどね。廊下で誰か待ってたから、彼氏とデート中だったのかもしれないわ」


彼氏って誰だろ。

森田じゃなきゃいいけどね。


しょっぱいタクアンをボリボリ噛んだ。
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