待ち受けカノジョ。
「うっわ、本の事忘れてた!ヤバい!」

街路樹のうるさいセミに負けないくらいのデカい声で、奈緒が叫ぶ。


「なんだ、知ってんじゃん」

「うん。だって、私が持ってるから…。貸し出しの入力しないで、勝手に借りちゃったんだよね」

「あらら!そりゃヤバいね」

「たぶん、まだ私のスクールバックに入ってると思う。滝山くんお願い!お母さんにさりげなく話して!」

「えー?オレが!?」

「そしたら、図書室にそーっと返してくれないかな?滝山くんだって一応委員なんだから何とかなるよ。ねっ、お願い!」

拝むように手を合わせる奈緒。


「しょーがねーなぁ…」

「ホント?ありがとう!」

奈緒が胸を撫で下ろして微笑む。


オレは人差し指で頬をポリポリ掻いた。


ダメなんだよな~

どうも、この笑顔に弱い。
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