待ち受けカノジョ。
ガチャ

「おっ!」

コンセントを何度か入れ差ししてると、プレーヤーのONボタンが光った。

「奇跡だ!」


父ちゃんがレコードの回転盤に針を落とした。

黒いレコードがゆっくりと回り、かすれ気味のピアノとハーモニカの音がスピーカーから流れ出す。


♪That was then, this is now…


「…このレコードな」

リビングのテーブルで、父ちゃんがいつもの水割りをマドラーでかき混ぜた。

向い側のオレは、カラカラと回る氷を見つめながら話を聞く。

「ずっとしまい込んで忘れかけてたんだ。でも、オマエが高校3年になって、思い出したんだよな、昔の事を」

水割りを傾ける父ちゃん。


カラン


テーブルの隅に、レターラックにしまったはずの、結婚式の招待状が置いてあるのに気付いた。

「父ちゃん達だって昔は子供だったんだよね。今まで大人は大人だと思って意識してなかったけど」

「なんだよ、当たり前の事言うな」

サビに向かってピアノの音が大きくなる。


♪I play the piano for…

ブツッ!!

音が止まった。


「ああっ!また壊れやがった!」

チッと舌打ちしながら立ち上がり、またコンセントを抜き差しする父ちゃん。

「なんだよ、今度は奇跡が起きねぇなぁ!」
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