待ち受けカノジョ。
『滝山くん、大丈夫?』

さっきの奈緒の言葉を、ふと思い出す。

『私は大丈夫。元気だよ!』


なに言ってんだよ、アイツ…


元気なハズないじゃん!


悲しみも不安も全部

自分の中に押し殺して隠して、

ムリに明るくしてるだけだろ。


ポケットから携帯を出して、おもむろにパカッと開く。

『えっ!?』

目をまんまるくして驚いた表情の奈緒。


パクパクしてる口は、たぶん

『電車でしょ?』って言ってる。


だまったままうなずくオレ。

携帯を左右に傾けて、隣には誰も座ってないのを奈緒に見せた。


『大丈夫』

オレの口パクも、たぶん伝わってるハズ。



だまったまま見つめ合う、オレと奈緒。

オレの真っ直ぐな目線に、奈緒はちょっと耐えられなくなった様子。

チラチラとオレを見ては、真っ赤な顔でうつむいたり目をそらしたりしてる。


…まったく。

フウッと息をはいた。


嘘つくのヘタクソだ、この子。


オレになんか気を使う事ないのに。


ニィッと引きつりながら不自然な笑顔を作っている奈緒を見て、オレは決心した。


うん。

このボロい携帯と、この中の奈緒に付き合おう。

奈緒がいつかちゃんと体に戻るまで。


それまで、スマホは保留。

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