scar-傷痕-



ゲロケロケロ…


なんともいえない音がしている。
小波さんが突然気持ち悪くなってタクシーを下りてからずっとこの調子らしい。

電柱の根本にしゃがみ込んでいる小波さんは顔面蒼白だ。


「あの、大丈夫ですか?」

「…!…あひひはん(愛里ちゃん)……ぐっぉえッ」

「…ダメみたいですね」


今度からはちゃんと考えて呑まないとダメですよ?そう付け加えてすっかり丸くなった背中をさする。

あれ?

なんかあたしまで気持ち悪くなってきた?

強烈な匂いに充てられてフラッとする。


「おい。タクシー呼んだからお前は先に帰れ」


パチンッ

しゃがみ込んだままのあたしの上から携帯を閉じる音が聞こえた。


「――か、んださん」

「あ゛?」


振り向く余裕もなく口を抑える。


「あたしもッ…ギモヂ悪っ…」

「あ゛ぁああ?!」


ばったーん!


…それからどうなったのかは覚えていない。
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