無限ループ
記憶

ああ、またあの記憶。
もう分かってるのよ貴女の言いたいことも貴女が死ねないことも。充分に分かったから、お願い消えて。



小さな頃から繰り返し見る夢。最近では幻覚のように目の前に現れる事もある。いい加減精神的にも参ってくるわ。
これは私の幼い日の記憶。




私のお母さんは、二十歳で家を飛び出して上京した。そして東京で出会った二つ下の父と親に内緒で結婚し、私を授かった。


だけど、私の両親は子供なんていらなかったらしい。
堕胎のお金がない両親は堕胎できる時期を過ぎてから母の両親の元へ挨拶へ行き出産費用をもらった。つまり、おろすお金は出してもらえないけれど、出産費用なら出してもらえると踏んで仕方なく私を出産したのだ。


東京の小さな産婦人科で私は生まれた。膜をかぶって生まれてきてしまった為、危うく死にかけたが無事に生まれることができた。


そうして初対面した我が子に私の父は一言目に「女の子だったら十歳になったら売れるな」と言葉をかけたそうだ。


父も母も誇れるようなまともな職業の人ではなかった。そんな父からすると生まれてきた我が子も売り物でしかなかったんだ。


望まれず愛されず仕方なく産まれてきた私。きっともうすでにここから間違っていたんだ。
ここから私のテーマは始まっていたんだ。
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