無限ループ
私が三歳の頃のある日、それは起った。
今も記憶にこびり付き消えない。私を蝕んで放さない記憶。
父は私に手を上げることがあっても母に手を上げることはなかった。それが父なりに母を愛していた事なのか、母には絶対に手を上げなかった。
ある日出先から帰って来た父は何か紙を取出し母と話していた。泣き縋る母に父は近くにあったバットを振り下ろした。
そのまま父は出ていってしまった。
母は頭から血を流しながら柱に紐を掛けた。
私の方をゆっくり見下ろしながら、「お前なんか産まなければ…」そう言って足元の椅子を蹴った。
少し大きくなってから知ったが、父が取出した紙は離婚届けだった。
どんな諍いがあって離婚に行き着いたのかは分からない。だけど、母は私を産まなければと言った。私が原因だったのだろう。
私が母を追い詰めてしまった。