たいむ あうと。
「…いた…」
ーえ…。
龍がこぼした一言。
何でそんな事言うの…。
あんな態度とっておいて…。

「ごめん、亜子。俺…本当に馬鹿で…」
龍の弱音を聞いたのも、初めてだった。
亜子はそっと龍の背中を叩いて言った。

「龍様のせいじゃありませんよ!!私のせいなんです!!」
龍の力は次第に弱まって来ているが、離してくれる気配は無し。
「…でも」

ズッ

「えっ!?…」
そのまま下におさえこまれた形になり、呆然とする亜子。
龍は目を閉じている。どうやら寝ている様子だった。
やましいことをしたかったわけではないらしい。

ーそれにしても会話の途中で眠るって、相当疲れてるんだね…。
亜子はそのまま龍の頭を撫でた。
ー心配しててくれたんだ。
あんな言い方しちゃったのに…。
やっぱり龍様は優しいんだね…。

彼のぬくもりを感じる。
暖かくて、心地がいい…。

「亜子…」
龍が亜子に話しかけた。
少し意識はあって、完全には寝ていないよう…。
「何ですか?」
龍はそのまま亜子に顔を近付けた。

「ー龍さ…」








彼は口付けをすると、今度は本当に眠ってしまった。
< 19 / 54 >

この作品をシェア

pagetop