たいむ あうと。
亜子の心音が高まっていく。
それと比例して葵は浮かべる笑みを妖しくさせる。

私の過去、それは、知ってはならないものなのだろう。
聞きたい。教えて欲しい。でも怖い。
肩が震えて力が入らない…-。
「亜子、お前はな…」
ーくそっ。
龍は剣を持ち、葵に向けて走り出した。

「馬鹿!!」
悠が声をあげる。

葵は龍の斬撃を防ぎ、彼の腹を切りつけた。

「ぐっ…!!」
血がじわじわと溢れていく。
兵が葵に攻撃しようとした瞬間、龍が手をあげた。

「やめ…ろ…」

「わたしは…わたしは何者なの?」
亜子は地面にひれ伏せた。
葵が近付いて来ているのが分かった。
逃げる気も、体力ももう無かった。
ー龍様…ごめんなさい…。

「お前はな、絶対にこいつらが許しちゃならない敵なのよ」

空気が張り詰めていくのが分かった。



「敵…」

「そうだ。こいつらが慕ってた龍の父親…睡蓮。そいつを殺したのが、お前の父親だ。つまりお前は、こいつらの憎き仇ってわけ」
龍様の…、皆の…仇?

「嘘だ」
「嘘じゃない。俺がここを抜け出したのは、お前がいるこの体勢が嫌だったからだよ。馬鹿じゃねーの?皆して過去は関係無いとか言って…。結局引きずってんのは同じだろ。憎しみは消えないんだよ」

一言一言が、心に刺さっていく。
これは夢だ。きっと悪夢なだけだ…

「お前が仲良しだと思ってた美加も、悠も、楓も、そしてー龍も、皆お前のことを殺すチャンスをうかがってた訳よ」
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