たいむ あうと。

「…美加。亜子に言ったこと、本気か」
悠は機嫌が悪そうに龍を見ながら言った。
美加は返す言葉も見つからない様子で、うじうじしている。
すると悠は美加の方を見て言った。

「こいつが悩んでたの、知ってたじゃろ」
「…」
「亜子の件は自分の責任だって悔やんでたのは龍じゃ!!!」
似合わない様子で叫ぶ悠に、美加は涙をこぼす。

「ごめんなさい…」
「悠!!説教したって何も変わらん。もう事件は起きた…これからの方針を決めるべきだ」
「……亜子は敵にまわるじゃろうな」

悠は美加に背を向けた。
美加にとってその言動は、とても痛かった。

「……ぅ…」
「!!」
龍が目を開いていた。
思わず3人は彼の名前を叫ぶ。

「龍!!」

龍は起き上がると、目をぱちくりさせた。
しばらくすると、ハッとした顔で全てを思い出す。
頭痛が走った。

「…皆は無事なのか?」
「心配はいらない」
龍を気使うように話す楓。

「亜子は…いないよな」
ハハ、と悲しげに笑う龍。
目元が笑えていない、作り笑い。

「何で相談しなかったんじゃ?」
悠が龍を追い詰めるように問いかけた。
その目は真剣で、彼の視線を逃がさない。
ゆっくりと龍は口を開いた。

「お前達に言ったところで、どうにかなる問題じゃない。それに…勝手に気付いてくれるだろうと思った」
龍は彼らを信頼しているということが分かる一面だった。
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