Do you love“me”?
「おねぇー、航太君は?」
稜君との会話がひと段落したらしいおねぇーに訊ねると、私に視線を移した彼女は、困ったように笑いながら後ろを指差した。
「酔っぱらった三浦さんに絡まれてる」
「あー、ホントだ」
三浦さんというのは、航太君がいたチームの先輩なんだけど……。
視線の先には、真っ赤な顔をした三浦さんに、チューをされそうになっている航太君の姿。
「すっごい頑張って阻止してるね」
「ね……。一回されちゃえば後はもう一緒だから、いっそのこと潔くされちゃうのも手だよね」
残念そうな視線を送ったまま、そんな事を言うおねぇー。
「あははっ! 美青ちゃん、それ航太が聞いたらホント落ち込むよー?」
彼女の言葉にお腹を抱えて笑う稜君は、本当に楽しそう。
「……」
別に、人の恋愛にどうこう言うつもりなんて毛頭ないし、いいんだけど。
ただ何となく、本当に少しだけ、稜君の気持ちを想ったら胸が痛んだ。
――だからだと思う。
「笑い事じゃねーし……」
その声に、肩がビクッと震えてしまったのは。
「おっ! 航太ー!」
溜め息交じりに呟いて、ネクタイを緩めながらやってきた航太君は、心底ゲンナリした様子で……。
「何だよ。三浦さんとチューしてやれよ~」
「だったら、お前がしてこいよっ!!」
やっぱり楽しそうに笑う稜君に、恨めしげな視線を送っている。
「結衣ちゃんは、サッカー好きなの?」
「え……あっ、はい!! 大好きです!!」
みんなのやり取りを、まるで夢の中にでもいるかのような恍惚の表情で眺めていた結衣に、最上さんが突然声をかけ、会話を止めた航太君と稜君も視線をそちらに向けた。
「そっかぁ! じゃぁさ、携帯の番号交換しようよ!」
「え?」
「試合のチケットとか、あげられるし。今度観に来てよ!」
ワタワタとする結衣の前で、最上さんは手慣れた様子で自分のポケットから携帯を取り出す。