Do you love“me”?
“電話くれるかなーって、ちょっと期待してたんだけど”
“打てど響かずって感じだな”
“それなりに態度で示してるつもりなんだけど”
「……」
あぁ。
気付くんじゃなかった。
“佐々木さん、俺ね――”
その言葉の続きは、きっと……。
「ごめんね」
その声にハッとした私は、俯いていた顔を上げた。
「ちょっとトラブル発生。今から出ないと」
「そうですか」
そのまま手に持っていた携帯を閉じて、小さく溜め息を吐く。
「ねー、佐々木さん」
「……はい」
「“杉本さん、頑張って”って言ってみて?」
「え?」
突然の言葉に目をパチパチと瞬かせる私を見て、彼はそれまでに見せていたどの表情よりも柔らかく、ふわりと笑った。
「ありがと」
「……」
「最近ちょっと、仕事キツくてなー。……って、部下にこんな事言っちゃダメだよな」
言葉とは裏腹に、どこか楽しそうにクスクスと笑う。
――それから。
「よし! 佐々木さんに元気も貰ったし、行ってくるよ」
もう一度私の頭をポンポンと撫でてから、部屋を出て行った。
パタンと閉まったその扉を、私はしばらくの間、見つめていた。
そして思考が働き出した瞬間、湧き起こったのは――稜君への罪悪感だった。
頭とはいえ、何度も杉本さんに触れられて……。
もし稜君が、他の女の人に同じ事をされていたら。
考えただけで、私の胸はズキリと痛む。
「はぁー……。最悪だ」
杉本さんに対して、やっぱり恋愛感情なんてものは湧きそうにもない。
それでもやっはり、少し距離を置こう。
そう心に決めた私だったのに、なかなか上手くいかないものなんだよね――……。