Do you love“me”?

“電話くれるかなーって、ちょっと期待してたんだけど”

“打てど響かずって感じだな”

“それなりに態度で示してるつもりなんだけど”


「……」

あぁ。
気付くんじゃなかった。

“佐々木さん、俺ね――”

その言葉の続きは、きっと……。


「ごめんね」

その声にハッとした私は、俯いていた顔を上げた。


「ちょっとトラブル発生。今から出ないと」

「そうですか」

そのまま手に持っていた携帯を閉じて、小さく溜め息を吐く。


「ねー、佐々木さん」

「……はい」

「“杉本さん、頑張って”って言ってみて?」

「え?」

突然の言葉に目をパチパチと瞬かせる私を見て、彼はそれまでに見せていたどの表情よりも柔らかく、ふわりと笑った。


「ありがと」

「……」

「最近ちょっと、仕事キツくてなー。……って、部下にこんな事言っちゃダメだよな」

言葉とは裏腹に、どこか楽しそうにクスクスと笑う。


――それから。

「よし! 佐々木さんに元気も貰ったし、行ってくるよ」

もう一度私の頭をポンポンと撫でてから、部屋を出て行った。


パタンと閉まったその扉を、私はしばらくの間、見つめていた。

そして思考が働き出した瞬間、湧き起こったのは――稜君への罪悪感だった。


頭とはいえ、何度も杉本さんに触れられて……。

もし稜君が、他の女の人に同じ事をされていたら。

考えただけで、私の胸はズキリと痛む。


「はぁー……。最悪だ」

杉本さんに対して、やっぱり恋愛感情なんてものは湧きそうにもない。

それでもやっはり、少し距離を置こう。

そう心に決めた私だったのに、なかなか上手くいかないものなんだよね――……。



< 236 / 397 >

この作品をシェア

pagetop