Do you love“me”?
それでも上手く事態が飲み込めない私は、ゆっくりと渡された書類に目を通す。
そこには、来月からリヴァプール市内の店舗で、一年間の雇用を保証する契約書類と――
「これ……は?」
最後のページに挟まれていたのは、航空会社の株主優待券。
「あぁ、それはね、俺からのプレゼント。空席さえあれば、いつの便のチケットにでも換えられる」
「どうして……?」
「んー? 恩を売っておけば、後々デカくなって返ってきそうな相手だし?」
そう言って、杉本さんはまた小馬鹿にしたように笑うけれど……。
「杉本さん」
「ん?」
「どれが本当の杉本さんですか?」
もう二度目のその質問に、杉本さんは口元に笑みを浮かべて言ったんだ。
「さぁ? あんたは、どれがいい?」
本当に掴み所のない人。
でもきっと……。
「私には、答えられないです」
私の返事を聞いて、またフッと笑うと、
「今日の便、まだ乗れるんじゃねぇの?」
パソコンの画面に視線を落としたままの杉本さんは、そんな言葉を口にした。
「……っ」
今日出たら、明日には稜君に逢える。
「ありがとうございます!!」
勢いよく頭を下げて杉本さんにお礼をした私は、急いでロッカールームに向かった。